米国最高裁判決で関税は全部なくなるのか — 日本で広がる誤解
2026-02-21
米国最高裁判決で関税は全部なくなるのか — 日本で広がる誤解...

最高裁判決で関税は全部なくなるのか — 日本で広がる誤解
 
2026年2月20日、米国最高裁がトランプ政権時代の関税措置の一部について「権限逸脱」と判断したというニュースが流れ、日本でも「これで関税は元に戻るのではないか」という期待の声を見かけます。しかし、結論から言えば、その理解は正確ではありません。
 
今回、最高裁が問題としたのは、大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に発動した、いわゆる“緊急関税”の部分です。裁判所は、この法律は本来、資産凍結や取引制限などを想定したものであり、関税を広範に課す権限までは含まれていない、と判断しました。つまり、「IEEPAの使い方が行き過ぎていた」という限定的な判断です。
 
重要なのは、米国大統領の関税権限そのものが否定されたわけではない点です。現在の対中関税の中核となっている通商法301条や、鉄鋼・アルミ関税の根拠である232条については、今回の判決は一切触れていません。これらの法的枠組みは依然として有効であり、政権が必要と判断すれば関税政策を維持・再構築する余地は十分にあります。
 
ビジネスの現場から見れば、今回の判決はワシントンに対して「緊急権限の乱用には歯止めがかかる」というシグナルにはなりましたが、対米輸出環境が急に好転するような性質のものではありません。特に製造業やサプライチェーンに関わる企業は、「関税が一気に消える」という前提で判断するのは危険です。
 
冷静に見るべきポイントは一つです。今回の最高裁判断は、米国の関税政策全体を覆したものではなく、あくまで“使える法的手段の一つが制限された”に過ぎません。日本企業にとって本当の影響が見えてくるのは、今後の米政権がどの法的手段を使って関税政策を運用していくかにかかっています。
 
 





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